2024年2月22日に史上最高値を更新した一方、8月に過去最大の下落をした日経平均株価。その後は徐々に株価は持ち直しているが、今後の日本株は「買い」なのか。25年間で2億円近くの資産を築き、配当金・手取りを年240万円得る(2025年見込み)という個人投資家の桶井道さんに「日本株が上昇する要因」「投資する際のポイント」「魅力的な投資先」を解説してもらった――。
※本稿は、桶井道『資産1.8億円+年間配当金(手取り)240万円を実現! おけいどん式「高配当株・増配株」ぐうたら投資大全』(PHP研究所)の一部を再編集したものです。
■株価上昇の要因は「国」「東証」「企業」「日銀」「バフェット氏」
2023年以降、日本株には追い風が吹いています。
ざっと、その要因をまとめると……
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・国は、2024年に新NISAを創設しました。
・東京証券取引所は、2022年に市場区分を再編して新たに3市場を設置しました。
・また、2023年には企業にPBR(※1)1倍超えを要請しました。
・企業は、増収増益を果たして、増配や自社株買いなど株主還元を意識しています。
・日銀の植田和男総裁は、就任時には金融緩和の継続を打ち出し、2024年3月には2016年から続いたマイナス金利を解除したものの「緩和的な金融環境」は継続しました。
・投資の神様といわれるウォーレン・バフェット氏が日本株に投資しました。
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このように日本株への追い風は1つ2つではなく、「国」「東証」「企業」「日銀」「バフェット氏」と多数重なっているのです。その結果、日経平均株価、TOPIXともに史上最高値を更新しました。日経平均株価は、8月5日に過去最大の4451円の下落がありましたが、その後は落ち着きを取り戻して、9月2日現在で3万8700円程度まで戻しています。
■もし10年前に三菱商事の株を買っていたら…
日本はすでに人口減少フェーズに入っています。それを引き合いに経済が縮小すると唱える方がいますが、悲観する必要はありません。
世界で稼ぐ企業、国内でもインバウンドで稼ぐ企業があります。世界シェアトップの企業だってあるのです。国内の需要(内需と呼びます)だけでも需要が増える分野があります。
たとえば、これからもデータ通信量は増えるので通信業を営む企業には、投資の活路があります。それらの企業は増収増益を果たして、株価が上昇しているのです。高配当だったり、増配もしています。
増配株(配当金が前年より増える)には魅力があります。もしも、10年前に、三菱商事、東京海上HD、NTTに投資していたら、投資額(簿価)に対する配当利回りは何%になっているでしょうか? 株価はどれだけ上がっているでしょうか?
図表1をご覧ください(2024年5月末日時点の情報)。これで増配株の魅力が伝わると思います。
このランキングは私が優良と判断する銘柄から、「投資額に対する配当利回り」(「最新の配当予想÷10年前の株価×100」で算出)を高い順に並べたもので、最も高かった企業は三菱商事。100円÷669.67円×100=14.93%でした。これに次ぐのが、東京海上HD14.83%(159円÷1072円×100)。3位以降は、住友林業11.86%、ヤマハ発動機9.38、NTT8.61%、信越化学8.27%、小松製作所7.53%、KDD7.19%、オリックス6.11%、栗田工業4.17%でした。
また、この10年間の「株価の上昇度」でいうと、東京海上HD(1072円→5429円、5.06倍)、三菱商事(669.67円→3303円、4.93倍)とやはり前出の2社がトップ2でした。
なお、10年前と最新の配当利回りを比べた「成長程度」がもっとも高かったのは住友林業で6.05倍という結果でした。
■中小型株から探さなくとも大型株で結果は残せる
このように、中小型株から探さなくとも大型株(※2)で結果は残せるのです。もしくは、中型株(※2)でも大型株に近いものから探しましょう。
増配によって配当金が増えていく、株価上昇によって含み益が増えていく。しつこくて恐縮ですが、増配株は「2度おいしい」のです。
一方、小型株は、リスクが大きいです。たとえば、工場一つが火災になっただけで、業績へのダメージが大きく、株価が半分になることすらあります。
また、大型株と比べると小型株は、株式を売買する人が少ないです。株式は買ってくれる人がいて初めて売り取引が成立します。
つまり、小型株の場合、いざという時に株式を買ってくれる人が少ないのです。
買ってくれる人が少ないということは、売りづらいということです。その結果、株価が大きく下がることが少なくないので、株価の変動が大型株に比べて大きいです。
新たに市場に株式を上場するIPO(Initial Public Offering)投資は、簡単に儲かることもありますが、その後すぐに損失を出すこともありますのでお勧めしません。上場してから期間が浅い銘柄も、株価が安定しないことがあるので避けましょう。
■株主優待を目当てに銘柄を選ぶリスク
日本株のいいところは、ほかにもあります。
たとえば、株主優待は日本独自の制度です。これは賛否両論ありますが、クオカードやカタログギフト、自社製品の詰め合わせなどを楽しみにされている投資家も一定数おられます。
ただし私は、株主優待目的の投資に反対する立場を取っています。
理由は、次の3つです。
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①優待廃止で株価暴落のリスクがあります。優待目当てだった株主が一斉に売るからです。
②株主優待で儲けたつもりが、株価が下落していたら投資は本末転倒です。
③株主優待は減る傾向にあります。
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近年、以下の企業が廃止しています。
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・JT(2914 2022年12月期で廃止)
・みずほリース(8425 2023年3月期で廃止)
・オリックス(8591 2024年3月期で廃止)
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株主優待はあくまでも、おまけに過ぎません。銘柄分析をおこなって、投資するに値するとの評価を下した銘柄に、株主優待があればラッキーくらいの気持ちでいることが望ましいと思います。
(※1)PBR
“Price Book-value Ratio”のことです。株価が1株あたり純資産(BPS:Book-value Per Share)の何倍まで買われているかを示します。現在の株価が企業の資産価値に対して割高か割安かを判断する指標で、数値が低いほうが割安と判断されます。PBRが1倍を切る水準はその企業の本来の価値よりも安い値段で株を買えることを意味します。
(※2)大型株、中型株、小型株
日本株の場合、時価総額と流動性を基準とした区分のことです。TOPIX(東証株価指数)を構成する銘柄で、時価総額と流動性が高い上位100銘柄(TOPIX100の算出対象)を「大型株」、次いで時価総額と流動性が高い上位400銘柄(TOPIX Mid400の算出対象)を「中型株」、大型株・中型株に含まれない全銘柄(TOPIX Smallの算出対象)を「小型株」と定義しています。
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桶井 道(おけい・どん)
投資家(投資歴20数年)・物書き
2020年に47歳で資産1億円とともに約25年間勤務した会社を早期退職。それから3年強で資産を1.7億円にまで成長させる。投資先は世界30カ国の高配当株や増配株、ETF、REITなど幅広い。現在は両親の介護・見守り(父は難病で要介護5、母はがんサバイバー)、そして家事をしつつ、単行本や連載、ブログなどを通じて投資やFIREに関しての情報を発信している。子ども食堂への支援も行う。著書に『今日からFIRE!おけいどん式 40代でも遅くない 退職準備&資産形成術』『月20万円の不労所得を手に入れる! おけいどん式ほったらかし米国ETF入門』(以上、宝島社)、『お得な使い方を全然わかっていない投資初心者ですが、NISAって結局どうすればいいのか教えてください!』(すばる舎)、『資産1.8億円+年間配当金(手取り)240万円を実現! おけいどん式「高配当株・増配株」ぐうたら投資大全』(PHP研究所)がある。(プロフィールイラスト=西田ヒロコ)----------